2025年4月、育児・介護休業法の改正が施行されました。
今回の改正は、育児や介護と仕事の両立をより現実的なものにする内容であり、企業には制度整備と実務対応の両面が求められています。
一方で、「情報は聞いているが、まだ就業規則までは手を付けていない」「自社に該当するのか分からない」という声も少なくありません。しかし、対応を先送りしたまま施行日を迎えることには、見過ごせないリスクがあります。
本コラムでは、育児・介護休業法改正に未対応の企業が抱えやすい3つのリスクについて解説します。
リスク①:法令違反による指導・是正リスク
育児・介護休業法では、改正内容に応じた制度整備や、従業員への個別周知・意向確認などが義務化されています。
にもかかわらず、就業規則や社内規程が改正前のままの場合、実務と法令の間にズレが生じる可能性があります。
その結果、次のような状態が生じるケースが少なからず見受けられます。
- 法律上は認められている育児・介護関連の制度が、社内規程に反映されていない
- 休業や短時間勤務の手続き、取得条件が法改正の内容と食い違っている
このような状況が確認された場合、企業としては対応しているつもりでも、制度整備が不十分と判断され、労働基準監督署等から指導や是正勧告の対象となる可能性があります。
「実際には柔軟に対応しているから大丈夫」と考えていても、規程に明記されていない=未整備と判断される点には注意が必要です。
リスク②:従業員とのトラブル・不信感の増大
改正後は、育児休業や介護休業について、従業員一人ひとりへの個別周知や意向確認が、これまで以上に重要になります。
対応が不十分な場合、従業員から次のような声が上がることがあります。
- 「本当は取得できるはずの休業を案内されなかった」
- 「人によって会社の対応が違うのは不公平ではないか」
特に、育児や介護はプライベート性が高く、対応のまずさが感情的な対立に発展しやすい分野です。
その結果、労務トラブルや離職につながるケースも少なくありません。
リスク③:採用・定着における競争力の低下
近年、求職者は「制度が整っているか」だけでなく、「実際に利用しやすいか」「会社として本気で取り組んでいるか」といった点も重視しています。
育児・介護休業法改正への対応が遅れている企業は、「働きやすさへの配慮が弱い会社」「法改正への意識が低い会社」という印象を持たれやすく、採用面・定着面の双方で不利になる可能性があります。
2025年10月からは、育児休業取得状況の公表義務が拡大されており、今後はこうした「見えない対応不足」が、より顕在化していくと考えられます。
就業規則を直さないまま迎える4月が危険な理由
育児・介護休業法改正への対応は、単に制度を「知っている」だけでは不十分です。
- 就業規則・育児介護休業規程の改定
- 社内運用ルールの整理
- 管理職への共有・教育
これらが揃って初めて、「対応している企業」と言えます。
施行後に慌てて対応すると、従業員への説明が後手に回り、トラブルが起きてからの対応になりやすい点にも注意が必要です。
今こそ「未対応かどうか」の確認を
今回の育児・介護休業法改正は、単なる法令順守の問題ではなく、企業の姿勢や人事戦略が問われる改正でもあります。
「うちは大丈夫だろう」と思っている企業ほど、一度、就業規則や運用状況を点検してみることをおすすめします。
育児・介護休業法改正への対応や、就業規則の見直し、実務運用でお悩みの際は、下記のお問い合わせフォームまたはお電話にて当事務所までお気軽にお問い合わせください。
